江戸期の庶民制度                                    江戸と座敷鷹TOP   江戸大名公卿TOP

 

41、譲屋敷取捌之事
(享保5年極)
○譲り請け候町屋敷、町内へ披露目これなく町の名前改めざる類で出入及ばず候はば→屋敷取り上げ


42、奉公人請人御仕置之事
(享保4年極)
○奉公人給金滞り→十日限り請け人へ済まし方申し付けべし
(従前々之例)(寛保3年極)
 但し日限りの節、半金も差し出し候はば十日の日延べ、其の上にて滞り候はば身体限り申し付けべく候、尤も主人より請け人、人主へ相かかり候はば両人へ申し付けべく事
(享保11年極)
○武士方奉公人を人主に取り候分→右同断
(享保3年極)
 但し右同断
(寛保4年極)
○給金出入を主人が請け人の家主へ相届け、預り証文取り置き候以後、請け人が欠落致すにおいては→家主へ給金済まし方並びに尋ね申し付くべし
 但し右立て替え金を請け人の店請けへ家主かかり候とも申し付けまじき事
(寛保2年極)
○奉公人病気に付き宿へ下がり候ところ、快気致し候えども相帰らず外へ奉公に出候においては→給金相済まさず候はば請け人は欠所江戸払、奉公人は同罪
(追加)
 但し給金相済まし候とも請け人過料奉公人手鎖
(従前々之例)
○取り逃げ引き負い致し候は請け人へ引き渡し、請け人より済ますべき旨証文取り置き候上で奉公人が欠落致すに於いては→取り逃げ引き負い金ともに請け人へ済まし方申し付けべし
 但し引き請けの証文これなきに於いては、欠落先を尋ねるのみ申し付けべく事
(享保4年、寛保元年極)
○欠落の奉公人→請け人へ三十日限り尋ね申し付け三日切り日延べの上尋ね出でざるは過料
 但し取り逃げ致し候者は六日切り日延べし尋ね申し付けべく事
(享保4年極)
取り逃げの品売り払うにおいては→買い主より戻し申すべし
 但し金子などは遣い捨て候事分明に候はば廃りに致すべく事
(寛保元年極)
○取り逃げの儀存じながら奉公人と謀り隠し置き候請け人、人主→江戸十里四方追放
(寛保3年極)
奉公人の給金を請け人が立て替え相済まし候以後、下請けへかかり(連帯保証人へ立て替え金を請求する)候節は→二十日限り済まし方申し付けべく候
○欠落奉公人を請け人が見付け出し当宿へ預け置き候に於いては→立て替え給金当宿へ二十日限り済まし方申し付けべく事
 但し奉公人は請け人方へ引き取り置き候上、欠落致し候はば請け人方に罷りあり候内の雑用とも当宿へ済まし方申し付けべく候、先だって下請け人へ立て替えかかり候においては、当宿へは過料申し付けべし、尤も確かなる証文これ取り差し置き候はば其の下請けの者に申し付けべく候、欠落ものは引き返したき旨請け人に相願い候はば引き返すよう申すべく事
(享保6年極)
○武士方町方とも欠落一通りの者を尋ね出し召し捕らえるに於いて候は→請け人へ引き渡し心次第申し付け、主人請け取りたき旨願い候はば主人へ相渡すべし
(従前々之例)
 但し欠落三日の内他所にて悪事致し候はば、主人方へ引き取り欠落には立て申すまじき事
(寛保元年極)
○人宿の外素人宿の分は→親類並びに同国の好身に候はば、拾い人返すは請け判致すべし
 但し拾い人ばかりに候はば過料過料申し付けべく事
(享保6年極)
○奉公人請け人店請けこれなき出入は家主引き請け相済まし、当人店立て願い出るは→当人は門前払い申し付け、追って住所見届け、家主願い出候節に身体限り申し付けべし
(寛保元年極)
○自分の名を替え、奉公人の請けに立ち候もの→江戸十里四方追放
 但し奉公人より馴れ合い判賃の外給金之内をも配分取り欠落致し候はば、死罪
○人の仕業と相見え候寄り子の変死を存ぜず分にいたし候者→所払
 但し人の仕業と相見えず変死致し候を訴え出ざる分は叱り
(従前々之例)
○寄り子欠落致し参り候儀は存じ候えども、盗人と存ぜず宿致し雑物質置き主になり世話いたし、遣い配分は取らざるもの→江戸十里四方追放
(寛保元年極)
○取り逃げの雑物を預り置き配分いたし又は礼金等取り、当人を隠し置き候請け人、人主→死罪
(延享2年極)
○奉公人と馴れ合い欠落致させ候請け人→重敲
 但し二度以上に候はば請け人は死罪
(寛保元年極)
○寄り子の内欠落七度に及び尋ね出さざる請け人→江戸払
(追加)(従前々之例)
○組合人宿寄り子の内を自分請けに立て置き候奉公人欠落致し、主人より断わりこれ有り、奉行所にて給金済まし方申し付け候ところ、其の人宿も欠落致すにおいては→給金滞るは人宿組合償いに申し付けべし、欠落致し候人宿の尋ねは家主に申し付け、尋ね出さざるにおいては過料申し付けべし
(追加)(寛保4年極)
○組合人宿にはこれなき好身の者に付き、人主印形は有り合わせの判を用い、自分請けに立ち出で置き候、奉公人欠落致し候ところ主人方へは相帰らず、またぞろ請けに立ち外へ奉公に出候においては→給金相済まさず候はば請け人は欠所江戸払、奉公人は同罪
 但し給金相済まし候とも請け人過料、奉公人は手鎖

※註
請け人=身元保証人、奉公契約を結ぶ前に目見(めみえ)という数日間の試用期間があり、これによって採用と決まると雇い主は給金を渡し、奉公人は請け状を差し出す、給金は全額ではなく内金である(この前渡しの給金を取替金と称した)、請け状は請け人の責任を明らかにするために作成するもので、加判するものは本人、請け人、人主、下請け人があった、奉公人の請け人になるとその請け人の家主、五人組、店請け人(たなうけにん、借家保証人)、同じ店(たな)の者に至るまで請け人の行為に対しある程度の責任が生じた
人主=奉公人の身元保証人、請け人とともに連帯保証する人、本人の親、兄、親類が多かった
取り逃げ=盗み取ること
引き負い=主人の金を使い込むこと、商舗の手代が請け売りしてその損失を自己負担する負債金の意もある
欠落=かけおち、夜逃げなど行方をくらますこと
人宿=ひとやど、奉公人を紹介する口入宿(くちいれやど)、江戸時代の職業紹介所
店立=家主が店子に貸家を明け渡させること
判賃=ここでは人宿が奉公人の請け人となった時に保証押印料として奉公人より受け取る謝礼金のこと、広義では奉公人の請け人に限らず、何かを保証し押印したことに対する礼金のこと、なお人宿は雇い主と奉公人の両方から口入料(紹介料)を受け取った、
好身=よしみ、何かの縁でつながりのある関係
寄り子=人宿に止宿して奉公口を探している者、寄り親に対する言葉で、武士方などでは組頭を寄り親、これに対して与力・同心を寄り子と呼ぶことがある
組合=人宿の中には取替金を受け取りながら奉公人を差し出さなかったり、4、5日勤めさせて逃亡させるなどの不正を行う者がいたので、宝永7年(1710)に人宿組合を作らせ、組合に加入しない者の職業紹介と請け人になることを禁じた、しかし親類や同国人数人の請け人になるぐらいは組合外の者にも許されていた、その後も不正が多く給金が高くなったことから、享保15年(1730)に人宿202人に限り組合を新たに作らせた


43、欠落奉公人御仕置之事
(享保5年)(寛保元年極)
○手元にこれ有り候品を与風(出来心から)取り逃げいたし候もの→金子は十両以上・雑物は代金に積もり十両位より以上は死罪、金子は十両より以下・雑物は代金に積もり十両位より以下は入墨敲
(追加)(延享2年極)
 但し先に入牢申し付け取り逃げの品償い候においては、十両以上以下とも主人願いの通り助命申し付け、江戸に罷りあらざるように申し渡すべく事
(享保21年、延享元年極)
○使いに持ち遣り候品を取り逃げいたし候もの→金子は一両より以上・雑物は代金に積もり一両位より以上は死罪、金子は一両より以下・雑物は代金に積もり一両より以下は入墨敲
(追加)(延享元年極)
 但し先に入牢申し付け取り逃げの品償い候においては、一両以上以下とも主人願いの通り助命申し付け江戸に罷りあらざるように申し渡すべく事
(従前々之例)
○巧み候儀もこれなく軽き取り逃げいたし候もの→敲
○給金請け取り主人方へ引っ越さざるもの→敲
○度々欠落致し候もの→重敲
○主人の金子を持ち出し博奕打つもの→重敲
(享保6年極)
○引き負い致し候もの、一向金に弁えこれなきに於いては→金高に応じ五十か百敲
(寛保元年極)
 但し当人並びに親類の身上に応じ引き負い金高三分の一或いは五分の一又は十分の一相済まし候はば、当人出牢の上追って身上持ち次第幾度も主人方より相かかり候よう申し付けべく事

※註
与風=出来心、ふと、ふらっとの意、読みは、「風に与(くみ)す」
巧み=計画的に行う犯罪、はかりごと
引っ越さざる=商舗の奉公人は住み込みであり、通いとなるのは番頭クラス



44、欠落者之儀に付御仕置之事
(従前々之例)
○請け合い人もこれなき欠落ものを囲い置き候もの→過料
(延享元年同2年極)
○欠落もの欠所になるべき屋敷を隠し置き候においては→名主役儀取り上げ過料五貫文、家守重キ過料、五人組過料
(追加)(寛保4年極)
○夫家出いたし行方相知れず候ものの妻、外へ縁付きたき旨願い出るにおいては→家出いたし候月より十ヶ月過ぎ候はば縁付きべく旨申し渡すべし


45、捨子之儀に付御仕置之事
(従前々之例)
○金子を添えた捨て子を貰い、其の子を捨て候もの→引き廻しの上獄門
 但し切り殺し〆殺し候においては引き廻しの上磔
(寛保2年極)
○捨て子これ有るを内証にて隣町等へまたぞろ捨て候儀顕われるにおいては→当人所払、家主過料、五人組過料、名主江戸払
 但し吟味の上名主五人組家主等存ぜざる儀紛れなき候はば構いなし


46、養娘遊女奉公に出し候もの之事
(享保18年極)
○軽きもの養娘遊女奉公に出し候もの→実方より訴え出候とも取り上げなし
 但し卑賎の者養子に遣わし候は実家にも其の心得これ有るべき事に候とて証文これ有り候とも取り上げなし、しかれども養娘格別難儀に及び候事を養父取りはからい候はば吟味遂げべく候、実子にても親の仕形法外の儀これ有り候はば吟味の上相応の御仕置申し付けべく事

※註
実方=実の親


47、隠売女御仕置之事
(享保7年、延享2年極)
○隠売女いたし候もの
(同)(元文5年極)
○踊り子を抱え置き売女致し候は→身上に応じ過料の上百日手鎖にて所へ預け隔日封印改め
(享保8年極)
○隠売女→三ヶ年の内新吉原町へとらせ遣わす
(元文5年極)
○踊り子ども
(享保6年、延享2年極)
○請け人、人主→身上に応じ家財三分の二取り上げ候ほどの過料
(延享7年、享保7年極)
○家主→身上に応じ過料の上百日手鎖隔日封印改め
(延享元年極)
 家主建て置き候家蔵これ有り候はば五年の内店賃相納めさせ申すべく候
(享保五年極)
○五人組→過料
○名主→重キ過料
(延享元年極)
○地主→五ヶ年の内家屋敷取り上げ地代店賃とも相納めさせ五ヶ年過ぎ候はば元地主へ返し下されるべし
 但し外に罷りあり候とも右同断に取りはからい、またぞろ売女置き候はば幾度も同様に申し付け明け地には申し付けまじき候
○御扶持人又は御用達町人拝領屋敷→右同断
(元文5年極)
 但し右同断
○寺社門前町屋→右同断
(享保14年)
 但し寺院神主は寺社奉行にて叱り置き、自分にて遠慮いたし候よう申し付けべく候
○同地借り町屋の分は→右同断
(寛保2年)
 但し寺院神主等の咎、右同断
(寛保2年極)
○商い物をも出し渡世致し候もの、妻同心せざるに売女に出し候もの→死罪
(追加)
 但し夫婦申し合わせ売女致させ候までにて飢渇のものは、盗み等の悪事これなき候はば糾明に及ばざる事
(追加)(寛保3年極)
○踊り子呼び寄せ売女致させ候料理茶屋→所払
○家主→過料
○地主→重キ過料
 但し地主其の所に罷りあらず他に罷りあり候はば叱り
○名主、五人組→構いなし
(享保6年極)
○隠売女を誘い引き出し候においては→男女ともに構いなし
 但し女は誘い引き出し候もの方へなりとも外へ参り候とも心次第申し付けべし

※註
御扶持人=幕府から扶持米を給されている商工者で、御用達町人と重なる部分がある
寺社門前町屋=寺社領地の門前にある賃貸の町家
地借り町屋=門前ではない寺社領地に建てた賃貸町家
商い物=ここでは居酒屋などの酒食の商物のこと


48、密通御仕置之事
(従前々之例)
○密通いたし候妻→死罪
○密通の男→死罪
(寛保3年追加)
○密通の男女ともに夫が殺し候はば→紛れなきにおいては構いなし
(追加)(同)
○密夫を殺し妻は存命に候はば其の妻→死罪
 但し若し密夫逃れ去り候はば妻は夫の心次第に申し付けべし
○女に同心これなきに密通を申しかけたり或いは家内へ忍び入り候男を、夫が殺し候時は不義を申しかけ候証拠分明に於いては→夫妻とも構いなし
○夫これ有る女へ密通の手引き致し候もの→中追放
(従前々之例)
○密夫いたし、実の夫を殺し候女→引き廻しの上磔
 但し実の夫を殺し候ように勧め候か又は手伝い致し殺し候男は獄門
(寛保元年極)
○密夫いたし、実の夫を疵付け候もの→引き廻しの上獄門
(追加)(寛保3年極)
○主人の妻と密通いたし候もの→男は引き廻しの上獄門、女は死罪
(従前々之例)
○主人の妻へ密通手引きいたし候もの→死罪
(追加)(寛保2年極)
○夫これ有り女得心これなきに押して不義致すもの→死罪
 但し大勢にて不義致し候はば頭取獄門同類重キ追放
○密通御仕置→妻妾とて無差別
○養母養娘並びに娵(よめ)と密通いたし候もの→男女とも獄門
○姉妹伯母姪と密通いたし候もの→男女とも遠国非人手下
○離別状遣らず後妻を呼び候もの→所払
 但し利欲の筋をもってこの儀に候はば家財取り上げ江戸払
(従前々之例)
○離別状取らず他へ嫁ぎ候女→髪を剃り親元へ相帰す
 但し右の取り持ちいたし候もの過料
○離別状これなき女を他へ縁付け候親元→過料
 但し引き取りの男同断
(寛保元年極)
○主人の娘と密通致し候もの→中追放
 但し娘は手鎖かけ親元へ相渡す
○主人の娘へ密通の手引きいたし候もの→所払
(追加)(寛保3年極)
○幼女へ不義致し怪我致させ候もの→遠島
○女得心これなきに押して不義いたし候もの→重追放
(従前々之例)
○夫これなき女と密通致し誘い引き出し候もの→女は相帰し男は手鎖
○下女下男の密通→主人へ引き渡し遣わす
(追加)(寛保4年極)
○他の家来又は町人等、下女と密通いたし忍び入り候もの→男は江戸払、女は主人心次第致すべし
(従前々之例)
○夫これ有る女と密通致し候男に頼まれ女を貰いかかり候もの→所払
(追加)(延享2年極)
○夫これ有る女、艶書きは度々取り交わし候えども密会致さず儀紛れなきにおいては→男女とも中追放

※註
密通=姦通、私通、男女が密かに情交すること
遠国非人手下=おんごくひにんてか、江戸を離れた場所の非人の頭を呼び出し、その手下へ属させる刑


49、縁談極候娘と不義致し候もの之事
(元文5年極)
○縁談決め置き候娘と不義いたし候男並びに娘ともに切り殺し候親→見届け候段紛れなきにおいては構いなし
(追加)(寛保3年極)
○縁談決まり候娘と不義致し候男→軽追放
 但し女は髪を剃り親元へ相渡す


50、男女申合相果候者之事
(享保7年極)
○不義にて相対死いたし候もの→死骸取り捨て、弔い申しまじき候
 但し一方存命に候はば下手人
○双方存命に候はば→三日晒し非人手下
○主人と下女と相対死致し、仕損ない主人存命に候はば→非人手下

※註
相対死=あいたいし、心中のこと、心中の文字は逆にすると、「忠」となり使用されなかった
三日晒し非人手下=日本橋橋詰に晒された後、浅草の非人住居区へ送られる刑


51、女犯之僧御仕置之事
(元文4年極)
○寺持ちの僧→遠島
(享保6年極)
○所化僧の類→晒しの上、本寺触頭へ相渡し寺法の通り致すべし
(寛保2年極)
○密夫の僧→寺持ち所化僧の差別なく獄門

※註
女犯=にょぼん、寺の戒律である不邪淫戒を犯して女と情交すること
所化=しょけ、僧の弟子、修行中の僧


52、三鳥派不受不施御仕置之事
(従前々之例)
○三鳥派不受不施類の法を勧め候もの→改宗致すべき由申し候とも遠島
(延享元年極)
 但し勧め候もの俗人に候はば其の子とも改宗致すべき旨申すにおいては所払、妻は構いなし
○同伝法を請け、其の上勧め候者の宿をいたし候もの→遠島
 但し改宗致すべき旨申すにおいては重追放
○同伝法を請け候内勧め候者の住居等世話いたし候もの→右同断
 但し改宗致すべき旨申すにおいては田畑取り上げ所払
○同伝法を請け候もの→改宗致し今後宗旨持ちまじき旨証文致すにおいては構いなし
 但し改宗致しまじき旨申すにおいては遠島
○同勧め候ものを村方に差し置き候名主組頭→伝法を請けず帰依致さず候とも役儀取り上げ
 但し伝法を請け改宗致すべき旨申し候とも名主軽追放、組頭は田畑取り上げ所払
○同勧め候ものは住居致さず候とも大勢村方のもの帰依致し候を存ぜざるにおいては→伝法を請けず帰依致さず候とも名主は重キ過料、組頭は軽キ過料

※註
三鳥派=さんちょうは、三超派とも記す、日蓮宗富士派の一分派で三鳥日秀を祖とし、邪法とされた
不受不施派=ふじゅふせは、日蓮宗の一派で京都妙覚寺の僧日奥が祖、法華経の信者以外の布施供養を受けず、布施も行わない宗旨により権力者から嫌悪された


53、新規之神事仏事、并奇怪異説御仕置之事
(寛保2年極)
○新規の神事仏事いたし候もの→出家社人に候はば其の品重きは所払、其の品軽きは逼塞、俗人に候はば過料
○奇怪異説申し触れ、人集め致し候においては→人集めいたし候宿は江戸払、発起いたし申し触れ候頭取は右同断、同世話いたし候ものは所払
(延享元年極)
 但し町方在方とも人集め致し候宿の名主は重キ過料、組頭五人組は過料、三十日以上捨て置き訴え出ざるに候はば町方在方ともに名主役儀取り上げ


54、変死のものを内証にて葬候寺院御仕置之事
(従前々之例)
○変死のものを内証にて葬り候寺院→五十日逼塞


55、三笠附博奕打取退無尽御仕置之事
(享保11年極)
○三笠附の点者、同金元並びに宿
○博奕筒取り並びに宿→遠島
(享保元年極)
○取退無尽の頭並びに宿
○(享保11年極)
○三笠附け句拾い→家財取り上げ非人手下
(享保元年極)
○取退無尽札売り
取退無尽鬮(クジ)振り、せわやき→家財取り上げ江戸払
(享保11年)
○三笠附いたし候もの
○博奕打ち候もの→家財家蔵取り上げ候ほどの過料、家蔵これなきものは五貫文或いは三貫文過料
(享保元年極)
○取退無尽いたし候もの
(享保11年)
○武家屋敷にて召し仕え博奕いたし候もの→遠島
(従前々之例)
○悪賽拵え候もの→入墨の上重敲
○手目博奕打ち候もの→遠島
(享保11年、延享2年極)
○三笠附の点者、金元並びに宿の家主
○博奕宿並びに筒取り致し候もの家主→身上に応じ過料の上百日手鎖
(享保元年、延享2年極)
○取退無尽宿並びに頭取の家主
(享保11年、延享元年極)
○同地主→屋敷取り上げ
(享保15年、同16年極)
 但し五ヶ年過ぎ元地主へ返し下され、この外にて致し候ものの地主は三ヶ年過ぎ返し下されべし
(享保20年)
 付、其の日稼ぎのもの商売にて当分博奕筒取り致し候類は、地主並びに所の者ども咎に及ばず
(享保11年、延享2年極)
○三笠附の宿
○博奕打ち宿の両隣、並びに五人組→身上に応じ過料
○取退無尽宿
(元文元年)
 但し在方は組頭、五人組とも過料
(延享元年)
○同名主→町方在方とも過料五貫文
(享保11年、延享元年極)
○同町内→家並び過料三貫文ずつ、向こう側小間に応じ過料
(追加)(従前々之例)
 但し在方は村高に応じ過料
(享保16年極)
○軽き賭けの宝引き、よみかるた打ち候もの→三十日手鎖
(追加)(寛保3年極)
 五十文以上のかけ銭に候はば、博奕同然の御仕置
○同宿いたし候もの→過料三貫文
(享保11年極)
○三笠点者、同金元並びに宿
○博奕打ち筒取り並びに宿
(同)(寛保元年極)
○取退無尽頭取並びに宿→訴え出候もの同類たりといえども、其の科を免じられ御褒美銀二十枚
 但し句拾い札売り等を訴え出其の手筋にて右の者ども捕らえ候はば金五両、又は三両御褒美下されべく候事
(追加)(従前々之例)
○仲間の者金子合力のためと申し博奕を催し合力金の内、内証にて自分も配分取り候もの→遠島
 但し博奕催し候世話は致さず候えども合力金貰い候もの、中追放
(追加)
○三笠附博奕打ち取退無尽の儀、町内名主五人組等訴え出候はば、当人並びに家主は御仕置申し付け、地主は地面取り上げ及ばず急度叱り、宿の両隣、五人組、名主、一町内のもの咎に及ばず
 但し在方も右同断
(追加)(享保16年極)
○すべて三笠附博奕打ち取退無尽御仕置一件の内、遠島もの五ヶ年過ぎ御赦しこれ有る節は御免の儀相伺うべき事
(延享2年)
 但し所払以上の御仕置の者も博奕一通りに候はば右同断相伺い申すべき事
(延享2年極)
○廻り筒にて博奕打ち候もの→過料
 但し三度以上廻り筒いたし候もの、中追放

※註
点者・金元=点者は通常では句の優劣を判断する俳諧の宗匠を指すが、ここでは三笠附の点者を指すから、句の優劣の判断は関係ないので金元と同じ意味となり、金を集める者を指す、三笠附は15箇条ですでに説明しているように三つの数字を当てる賭博同然のものであった、この三笠附に参加するには1〜21の数字を書いた用紙を句拾いから買い、これだと思う数字に点を付けて料金(十文ほど)を添えて(これを附札懸銭と称した)句拾いに渡せばいいのである、句拾いとは点者金元に雇われて用紙を売り歩いて句(数字)を集める者、つまり、附札懸銭を集める者のことを指す
筒取り
博奕用のサイコロを入れた筒筒を振る者、または博奕で当たりのところへ張った金以外を取り集めてその何割かを当たった者に払うこと
悪賽=賽はサイコロ、いんちきなサイコロ、転じて、いかさま
手目=てめ→いんちき、ごまかし、いかさまなどの意がある
宝引き=たからひき、福引の類


56、盗人御仕置之事
(享保6年、同7年極)
○すべて盗物の品は盗まれ候ものへ相返し申すべく候、金子遣い捨て候はば損失となし、もちろん盗物取り戻し候とも差別これなく御仕置申し付けべく事
(従前々之例)
○人を殺し盗み致し候もの→引き廻しの上獄門
(享保7年極)
○盗みに入り刃物にて人に疵付け候もの→盗物持主へ取り返し候とも獄門
(追加)(従前々之例)
 但し忍び入りにてこれなく候とも盗み致すべくと存じ人に疵付け候もの、死罪
(享保7年極)
○盗みに入り刃物にてこれなく外の品にて人に疵付け候もの→右同断死罪
(従前々之例)
○盗み致すべくと徒党いたし人家へ押し込み候もの→頭取は獄門、同類は死罪
(享保5年極)
○家内へ忍び入り或いは土蔵など破り候類→金高雑物の多少によらず死罪
(延享元年極)
 但し昼夜に限らず戸明きこれ有る所又は家内に人これなきゆえ、手元にこれ有る軽き品を盗み取り候類、入墨の上重敲
(従前々之例)
○盗人の手引き致し候もの→死罪
(元文5年極)
○片輪もの所持の品を盗み致し候もの→死罪
(従前々之例)
○追剥いたし候もの→獄門
○追落いたし候もの→死罪
(享保5年、寛保元年極)
○手元にこれ有る品を出来心から盗み取り候類→金子は十両より以上・雑物は代金に積もり十両位より以上は死罪、金子は十両より以下・雑物は代金に積もり十両位より以下は入墨敲
(元文5年極)
○悪党者と存じながら宿いたし、盗物売り払い遣わし又は質に置き遣わし配分取り候もの→死罪
(寛保2年極)
○悪党者と存じながら宿いたし又は五十七日宛て逗留させ候もの→重追放
 但し悪党もの磔に行われ候はば宿いたし候もの死罪
○家蔵へ忍び入り候盗人に頼まれ盗物を持ち運び配分取り候もの→敲の上軽追放
 但し配分取らざるに候はば敲の上所払
(従前々之例)
○御林の竹木申し合わせ盗伐いたし候もの→頭取は重追放、頭取に推し候もの中追放、同類は過料
(享保5年極)
○軽き盗み致し候もの→敲
(従前々之例)
○一旦敲になり候上軽き盗み致し候もの→入墨
○途中にて小盗いたし候もの→敲
○橋の高欄又は武士屋敷の鉄物はずし候もの→重敲
○湯屋へ参り衣類着替え候もの→敲
○軽き盗人の宿いたし候もの→所払
(享保元年極)
○盗物と存じながら世話いたし配分は取らざるもの→敲
○盗物と存じ預り候もの→敲
○陰物買い→入墨の上敲
 但し年来この事にかかりおり候ものは死罪
(従前々之例)
○陰物と存じながら又買い致し候もの→入墨の上敲
○盗物とは存ぜず候えども出所相糺さず質に置き遣り候もの→過料
(追加)(延享4年極)
 但し武家の家来に候はば江戸払
(追加)(寛保2年極)
○片輪ものを殺し候て所持の品を盗み取り候もの→引き廻しの上獄門
○家蔵へ忍び入り、旧悪に候とも五度以上の度数盗み致し候もの→物取らざり候とも引き廻しの上死罪
(享保4年極)
○盗人を召し捕らえ雑物取り返し内証にて逃し遣わし候もの→当人名主叱り
 但し死罪になるべき盗人を内証にて逃し遣わし候はば、名主当人軽キ過料
(寛保元年極)
○盗人を召し捕らえ吟味の上他所にて盗み候雑物金子等所持致すに於いては、遠国に候とも其の所の奉行御代官或いは領主へ申し達し盗まれ候当人召し呼び其の品渡し遣わすべき事
 但し少分の品にて当人請け取りに参り候儀遠国等にて難儀に候て廃りに致したき由申し候はば、其の分に致すべく候、若し又右雑物取り上げ置き候土地に親類由緒のものこれ有りて、彼の者の名代にて請け取りたき旨相願い候はば願いの通り申し付けべく事
(追加)(寛保3年極)
○盗物と存じながら下直に買い取り候もの→所払

※註
追剥・追落=追剥(おいはぎ)は相手をつかまえながら衣類や懐中物を奪い取ること、追落(おいおとし)は相手をつかまえないで懐中物を落としたところを取ること、追落という言葉は鎌倉時代からある古い言葉だといわれる
御林=朝廷・幕府の直轄の山林
陰物=盗品
小盗=スリのこと
下直=安い値段


57、盗物質に取又は買取候者御仕置之事
(享保6年、元文5年極)
○盗物と存ぜずに証人取りて、通例のごとく質に取り、吟味の上盗物の儀存ぜざる訳に決め候はば、証人に元金を償わせ、質物は取り返し盗まれ候ものへ相渡すべく申す事
 但し証人も御仕置になり金子差し出すべきかかりこれなく候はば、質屋損金に致すべく候、尤も証人これなく或いは不念の質取り方に候はば、質屋損金に致し其の上で咎申し付けべく事
(享保5年、元文5年極)
○盗物と存ぜず反物其の外買い取り候もの、其の色品取り送り盗まれ候ものへ取り返し代金は買い主不念候とて損金に致すべく候、証人取り候て買い取り候はば証人に代金を買い主方へ相渡すよう申すべく候事
 但し盗み取られ候色品有る所相知らず代金盗人所持致し候は、取り上げ盗まれ候ものへ相渡すよう申し付けべく候、盗物買い主より取り返し候上代金盗人所持いたし候はば公儀へ取り上げ申すべく事
○盗物と存ぜず買い取り売り払い候節は、売り先段々相糺し代金をもって買い戻させ、盗まれ候ものへ相返させ、盗人より最初に買い取り候者の損金に申し付けべき事
 但し売り先相知らず候はば、最初に買い取り候ものより盗まれ候ものへ代金にて償うよう申すべき事
(寛保2年極)
○紛失物を町触の節隠し置き候もの→家財取り上げ江戸払
(従前々之例)
○組合の定めこれ有る商物組合に入らず商売いたし候もの→商物取り上げ過料
○一人両判或いは証人これなき質物を取り候もの→其の品取り上げ過料
(寛保7年極)
 但し町触の節訴え出るにおいては其の品取り上げ咎に及ばず

※註
証人=保証人のこと
町触=まちぶれ、江戸の町方へ出された法令、町触の伝達経路は、町奉行→町年寄→名主・月行事(69箇条で説明)→家主→店子、伝達は書面ないし口頭で行われた。ただし口頭の場合でも覚書が与えられ、これを口達書(こうたつしょ)と称した
一人両判=一人の者が二つの判を捺すこと、ここでは質屋に質物を置いた本人が請け人の判も持っていき捺すこと、質物を置く場合は本人の判と請け人の判が必要なのだが、必ず請け人を伴なって質屋へいくのが決まりだった



58、悪党者訴人之事
(元文3年極)
○悪事これ有る者を召し捕らえ差し出し候か又其の者を訴え出候時、右訴え出候ものにも悪事これ有る由を悪党者方より申しかかり候とも猥りに相糺しまじき候、若し本人より重き悪事を証拠確かに申すにおいては双方の詮議致すべき事
 但し総じて罪科の者を訴え出るにおいては同類たりといえども其の科を免じられ候事に候条、其の趣をもって作略致すべく事


59、倒死并捨物手負病人等有之を不訴出もの御仕置之事
(寛保2年、延享元年極)
○倒死並びに捨て物等これ有るを押し隠し訴え出ざるにおいては→店借地借家主は過料五貫文、五人組は過料三貫文、名主は過料五貫文
 但し地主家主名主五人組が存ぜざるにおいては構いなし、在方も右同断
○変死並びに手負い候ものを隠し置き訴え出ず、其の外病人等隣町へ送り遣わすにおいては→店借地借家主は過料五貫文、五人組は過料三貫文、名主は役儀取り上げ過料五貫文

※註
倒死=行き倒れ人
捨て物=捨てられた危険物など


60、拾ひ物取計之事
(享保6年極)
○拾い物の儀訴え出候はば、三日晒して落とし主が出で候はば金子は落とし主と拾い候ものへ半分宛て取らせ申すべき候、反物の類に候はば残らず落とし主へ相返し拾い候者へは落とし候者より相応に礼仕わせ申すべく事
(元文3年極)
○落とし候物の主が落とした事を相知り申さず候はば、六ヶ月見せ合うて落とし主これなき候はば拾い候ものへ残らず取らせ申すべき事
(従前々之例)
○拾い物いたし訴え出でざる儀顕われるにおいては→過料