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■上2枚はクロヤマアリ約6ミリ。下4枚はアリグモ♀約7ミリ。アリとアリグモについて考えてみた。 |
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アリグモはアリに似ているからアリグモと言う、まったく身も蓋もない名前を付けられた。人間の肉眼ではよく 似ているように見える。しかし、アリグモの天敵たちには似ているように見えるのだろうか。訊いて答えてくれ るものなら尋ねたいところである。 まずは、ハエトリグモの中でアリグモの際立つ特徴は? A走る時以外は常に第一歩脚を上下に動かしている。 B頭胸部が2節あるかのように曲がっている。 C毛がない(細繊毛がある)ように見える。 以上3点である。いずれもアリを真似ている点と思われる。 では、アリと異なる点を挙げてみよう。 Aアリの頭部にあたる部分が方形である。 B走る時は第一歩脚を使う。 C真後ろに素早く後退する。 D目線を送る。 E跳び糸を吐く。 いずれも天敵とされる狩りバチや鳥などからアリと違う!と悟られる点である。殊に頭部と見せている部分が アリは流線型と言ってもいい三角形であるのに対して、四角ばっており走ると、つまり逃げる際にその違いが よく判る。天敵が近づく→目線を送る→逃げる→一層違いが際立つ、これではアリに似せた意味がない。 アリはフェロモン(成分は炭化水素)によって別種のアリを識別し、尻から蟻酸(一種の毒液)を発して敵を威 嚇する。鳥は蟻酸を嫌うからアリを喰わないと言う説があるが、コゲラなどはアリを好んで喰う。よってこの説 は怪しく、アリグモがアリを真似るのは鳥から身を護るためと、わたしはtopの「アリグモ見聞記」に書いたが 誤りであろう。 アリグモがアリに似せた意味は何だろう。 アリを真上から見下ろすと、口吻の部分が下に向くため頭部の形は方形に近いものとなる。従ってアリグモと 紛らわしくなる。アリは地上はもちろん樹皮や葉を這っている。建物の壁や塀にもいる。組織だった行動をする ため単独でいることはない。最もよく見掛ける昆虫のひとつである。アリグモも場所を選ばずどこにでもいる。 上方から飛んで来る敵は識別できないと思われる。おそらく、この一点だけが費用対効果からアリグモにアリ の形態に似せる道を選ばせたものと考えられる。それだけ上方から攻撃してくる敵が多かったのであろう。 アリグモはアリを喰わない。アリ2匹とアリグモ♀1匹をフィルムケースに入れて様子を見たことがある。1日目 は何も起こらなかった。2日目、アリグモは死んでいた。アリ2匹は元気だった。死んだアリグモに外傷はない か調べた。傷はなかった。おそらくアリが放った蟻酸にやられたのだと思う。人工的な試みだったが、アリグ モはアリを喰わないと思われる。 あるWebサイトにアリグモがアリを喰うところを目撃したと記してあった。アリ3_、アリグモ4_だったと言う。 画像がなく判断を保留せざるを得ないが、わたしは5_以下のアリグモをこれまでに見たことがない。つまり 5_以下のアリグモを識別することができないのである。 アリを喰うことで知られているクモは、アオオビハエトリとカニグモである。この2種がアリを喰っている画像は Web上にある。アオオビハエトリ捕食画像(JSP-G)、カニグモ捕食画像(学研)。 さて、思えば皮肉である。アリは狩りバチから分岐したものと言われている。狩りバチには組織的行動をとる ハチ(スズメバチ、アシナガバチなど)と単独生活をするハチ(ベッコウバチ、ジガバチなど)がある。アリグモ は単独で徘徊するが、体形を組織的行動をとるアリに似せている。そのアリグモを襲う狩りバチは単独で生 活する種なのである。 |