■鳥追 例年正月二日の早朝に鳥越は来る。絹類を着ることを禁止されているので、新調の木綿を着ているのだが、絹縮緬のように見えるのが妙である。帯の締め方や襟元の様子など細腰で着こなしが素晴らしい。被った編笠の顔がゆかしく、三味線二上がりの調べが新年の春の心を伝えてくる。
■獅子舞 ドンドン太鼓の音に篠笛を配して流し来(きた)るは門獅子舞。見れば、笛吹く者と太鼓打つ者はみな新調の衣類、切り立ての手拭、麻裏草履の鼻緒の真白きに黒き足袋。新春の時を得た顔色にて諸方の招きを待つ。
■万歳 三河国(みかわのくに)より江戸へ来たりて家々の睦(むつ)まじきを寿(ことほ)ぐ。各自諸家へ出入する他、寺社へも出向く。太夫が歌をうたい舞う間に才蔵は婦女に戯れ声高に笑わせたりする。また門万歳(かどまんざい)というものがあり、これは家々の門戸に立って投銭を貰うものだが、三河万歳ではなく別ものである。 |