■江戸年中行事&風俗                                                   江戸と座敷鷹TOP  江戸大名公卿TOP

諸職人
 
諸職人に家職(やしょく)と居職(いしょく)の違いがある。家作りに関わる大工・左官・瓦師のごときを家職、刀剣・鍛冶・蒔絵師のごとき専ら家作りに関係ない職人を居職という。
 十月下旬より諸職とも頻(しき)りに仕事に追われ寸隙もない状態となるのは、毎年同じことである。居職のごときは十月より夜なべを始め、その上深夜まで仕事をし、なかには徹夜することも度々ある。

煤竹を商ひ又焼芋をうる
 煤竹は毎年十二月十日頃より売り始める。当月十三日は将軍家御奥の御煤払い大掃除である。その前はこの煤竹を担い歩いて売るという。嘉永の頃は煤竹売りは絶えて来ることはなかった。
 町内ごとに木戸の番太郎(木戸番)が商う木戸際の店で売る。また、冬の初めより釜を据えて焼芋を焼いて売る。大通りで焼芋を売る店はあるが、芝口より筋違橋御門まで焼芋店は一軒もない。されば寒中の深夜に通行する時には便利だとして焼芋を商うことを許された。よって他町すべて焼芋を番太郎が商う店で売ることになった。そして藁(わら)を焚くのは火の元無用心として薪で焼く。芋は本場の川越のものを焼くので味が素晴らしい。

煤払
 煤払い大掃除はこの月より江戸市中の家ごとに行われる。寺社には煤払いに古式あるところが多い。諸侯にも家々に古例がある。武家でも小禄なる家や町家の富豪なる古家には、みな家々に旧例がある。
 通り町筋にては夜になると煤取りを行う家が多い。普段出入りの職人や召し抱えている鳶人足が幾人となく来て掃除を手伝う。掃除手伝いが終わると、祝儀目録金・手拭などを貰い、例年の定めとして酒肴の振舞いがあり、飲み飽きると帰るのである。この夜中に煤取りを行うのは、繁忙なために業務の手都合(てつごう、仕事の繰り合わせ)によるものである。