■江戸年中行事&風俗                                                   江戸と座敷鷹TOP  江戸大名公卿TOP

町家の年礼(ねんれい、年始の祝賀の礼)
 主人は黒羽二重、紋付小袖、麻裃、白足袋、雪駄をはき小刀(こわきざし)一腰(ひとこし)、蒔絵の印籠は粋と美を兼ねたものとする。供人は、小僧衆は千種(ちぐさ)色の股引、白足袋、雪駄、木綿の綿(わた)入れ、小倉織の帯、文庫を風呂敷に包んで胸に掛け、片手に小盆を携えたりもする。
 また抱えの鳶の者は青縞の腹掛、股引、足袋、麻裏草履をはき、絹の小袖を着重ねし、その上に店の印染出(しるしそめだ)しの革羽織を着て挟箱(はさみばこ)を肩にする。
 以上は町内屈指の大町家(おおちょうか)の年礼である。これ以下は主人は袴と羽織にて、供に小僧一人を連れる。職人は大棟梁でなければ青縞の股引、腹掛、足袋、麻裏草履に木綿の衣類か、あるいは銘仙を着る。年礼廻りは二日からで町家は元日にせず。年礼軒数多きを外聞(見栄と同意)とする者は、幇間(ほうかん、たいこもちの意)または遊び芸人ばかりである。

新吉原の引初め
 晴れ着の縫い模様もたおやかに、三弦の弾き初め、鼓(つつみ)太鼓の三番叟(さんばそう)、御代の寿を祝う正月二日の調べを、通客が茶屋で聞く。

江戸町火消出初
正月二日は江戸八百八丁及び本所深川の十六組の出初がある。合図の半鐘を打ち鳴らし、いろは四十八組が各々の持場で繰り出す火消道具は新しく、揃いの半纏、鉢巻姿で梯子を立て、注連縄(しめなわ)、輪飾りのなかで曲乗(はしごのり)を見るのは勇ましくて心地がよい。
 出初の隊備えは、組の頭取役及び世話番役並びに各町の鳶頭が揃いの革羽織と青縞の股引、足袋、腹掛に草鞋をはき、絹小袖を着て先に立ち、次に絹小袖を重ね着した梯子、指股(さすまた)を持つ者、次に絹小袖の上に半纏を着け纏(まとい)を持つ者、これを鳶人足が囲み、次に龍吐水(りゅうどすい)、並びに玄蕃桶(げんばおけ)、消札が続く。あたかも武士の戦場へ赴くのと同じように見る者の心を活気だたせる。