■からくり 覗(のぞ)きからくりは近年まで流行っていた。このからくりの外題は八百屋お七、小栗判官一代記、源頼光大江山入など、実に評判が高かったものである。これらを面白い調子で喋りながら、覗いた箱のなかの画を変えて見せると、男女の児童の別なく楽しんでいる。画風も児童が好むよう色とりどりに描いてある。 からくりは年中来るもので夏のみではないが、暫(しばら)く夏の部に入れておく。縁日や祭礼の場所などには、幾つとなく並べて覗かすのである。
■蟀々売(きりぎりすうり) 江戸の虫売りは担い道具の作りが涼しげである。虫籠も品がよくきれいに作ったものを吊るしている。鈴虫、松虫、轡(くつわ)虫、邯鄲(かんたん、鳴く虫)、蛍などを商っている。また、江戸近在の者が虫を捕らえて江戸で売り歩くこともある。彼らの担い道具や虫籠などは粗末で、売る虫の種類も少なく蟀々と轡虫くらいである。しかし、売値は江戸の虫売りよりは余ほど安価なので、よく売れている。 虫は六月上旬より七月の盆前後まで盛んに売れるが、盆にはみな飼っておいた虫を放つため、盆以後は売れ口が少なくなる。 |