■江戸年中行事&風俗                                                   江戸と座敷鷹TOP  江戸大名公卿TOP

上野東叡山の花見
 上野東叡山の桜は三月節句前後に咲き出す。桜狩する人が多く振袖を連ねて幕としたのは昔の話で今は絶えてない。森々と生い繁る花にて雲を透して見る花とは異なり深い趣きがある。
 当山は禁酒の地にして酔客が婦女に戯れる恐れがなく、当山の花見は老人女子が多い。
 この頃お揃いと称して、花見に出掛ける手跡の師匠や踊り、歌、浄瑠璃の師匠たちが弟子を連れ、揃いの日傘手拭で八、九十人から百人以上が袖連ねて花の下に遊ぶ。
 山中の塵(ちり)を絶し清浄なる中堂二ツ堂を始め金碧荘厳(きんぺきそうごん)な建物の間に桜花咲き満ちた風景は、極楽世界もかくやあらんと思うばかりの御山(みやま)である。

汐干狩
 三月三日は例年大汐干潟(ひがた)となるゆえ深川洲崎、品川の海上に汐干狩へ出掛ける者が少なくない。蛤(はまぐり)を拾い貝類をあさる人たちを望むと豆のごとく小さい。
 品川の海畔高輪通りは参勤交代の大名方の荷物が行き、往来から聞こえる長持歌の声が面白い。汐干狩と同時節のことで一興の風景である。

奉公人出替り
男女とも武家町方の別なく勤め奉公する者の出替り時は、三月四日以後なので、この出替りを胡葱膾(あさつきなます)で叩き出すという戯言(ざげん)がある。これは三月三日上巳に必ず胡葱膾の料理を家ごとにするため、これを食べるや古参去りて新参来(きた)ることを戯れに言ったのである。それ以前は奉公人出替りは三月ではないが、天保以降はみな三月を出替り時としている。